バンガロールの投資家や起業家が集まるINVEST KARNATAKA 2016でアグリビジネスセミナーに参加してきた
INVEST KARNATAKA 2016って?
インドのバンガロールでオーガニック日本食ブランドを立ち上げ中の鴛渕さん(前回記事参照)にこんなのがあるよと教えてもらったのが、INVEST KARNATAKA 2016というイベント。
こちらのイベントは、2/1~2/3に渡って、バンガロールの属するカルナータカ州が主催する州の産業の各セクター見本市及びカンファレンス、セミナー、BtoBmeetingの場を提供することで同州への企業進出や投資を促すもの。インドのシリコンバレーと言われるバンガロールはインドの中でも重要な稼ぎ頭なのかもしれません。私が参加したセミナーだけでものすごい量の資料でした。
設備も警備体制もかなりのもので力入っていました。
ちなみに、本家シリコンバレーのこういうカンファレンス系イベントは10~20万円の法外なお金を取られるようです(ex:World Agri-Tech Investment Summit)が、こちらは政府主導ということもあってかvisitorであればだれでも参加できて無料です。しかも大抵のところは見て回れるので最高です。なので若い人もかなり多かった印象です。
こちら(↓)のイベントカレンダーをみると大体どんな内容が繰り広げられているのか分かります。
私は農業のことに興味があったので、イベント初日の、Agri-Business & Food Processing セミナーに参加してきました。
Agri-Business & Food Processing セミナーについて
まずつっこみどころとして、開始が30分くらい遅れて、終了も40分押しとなっていました(笑)。インド文化なのでしょうか? また、スピーカーが14名ほどいらっしゃってその内キレイな英語を喋られていたのは2,3名の方くらいでした。残りの方はインド英語だったので正直かなりの部分は聞き取れなかったです。インドで生きてくには、別で"インド英語"を勉強する必要がありそうです...。
上記の理由もあり、セミナー自体から汲みとった内容は少ないですが、とにかく「州によるかなり強いバックアップ体制があるので心配ないぞ!どんどん投資しろ!」というメッセージは汲み取ることができました。
以降は、資料が非常に充実していたので、そちらを参照しながら内容をかいつまんでみます。
カルナータカ州のアグリビジネスの強み
- 食料加工セクターの2009-2013年までの年成長率は20%、国の平均成長率16%を上回る数値
- 2014-2015年のUSD20億ドルの輸出額で、年率成長率は22% -カルナータカ州は10個の気候エリア、6つの土壌性質をもつエリアに分けられるため様々な種類の農作物を育てることができる
また、以下の作物はインドの中でも有数の生産高を誇るそう。
このランクにある作物を見るだけでもかなり幅広い作物が取れていることが伺えますね。
余談ですが、ランク1にあるコーヒーは確かに街中でもコーヒースタンドがたくさんあって立ち飲みしてる人が多かったように思います。あでもコーヒーじゃなくてチャイ飲んでたのかな...?ただCafe Coffee Dayというコーヒーフランチャイズショップは最近やたら多かったです。スタバの超廉価版って感じ。かのセコイヤキャピタルインド支部も投資をしてIPOによりリターンを得ていたようです。
Sequoia to get 18% return on Cafe Coffee Day exit | Business Standard News
カルナータカ州のアグリビジネスエコシステム
優れたインフラと人材
- 6つのフードパーク(水や電気、洪水時の排水システムなどアグリビジネスに適したエリア)を有し、4つは稼働中、2つは建設中。それともう1つメガフードパークっていうのもある
- 2百万トン収容可能な工場、30万トンの貯蔵庫が稼働中
- 農業や園芸農業に関する国の研究機関が5つもあり、同分野のHUBとなっている
- 農業、園芸農業、獣医学のトレーニングをうけた4000人もの学位を持った人間が毎年輩出される
優れたマーケットと貿易拠点
- 同州はインドで初めて花卉国際オークションセンターが設置され花卉輸出の中心地となっている
- カルナータカはgherkin(キュウリ)、rose onion(赤玉ねぎ)、切り花の国内でも有数の輸出州
豊富な貸付可能地
- 6つのフードパーク内に380エーカーもの貸付可能地がある
- KIADBというところでは今すぐにでも利用可能な貸付可能地が6000エーカー以上ある
カルナータカ州政府のサポート
- MSME(Micro, Small & Medium Enterprises)に対して固定資産35%の補助金を提供(上限650万ルピー)
- 税金の75%が5年間免除される(固定資産に関しては、MSMEは100%免除を上限、カテゴリABCの企業はそれぞれ60~80%が上限)
- 毎年(最高7年間)利益の6%を補助
- 国立研究所の開発した技術を適用すると、導入コストの50%(最大100万ルピー)を補助する
- その他印紙税(Stamp duty)の免除、入境税(Entry tax)、電気税(Electricity tax)、農地転用費を最大100%免除など
※ 日本円はルピーの大体1.6倍です(2016年2月11日現在)
オーガニック農業に関して
どの発表者もそれほど言及はしていませんでしたが(多分)、インドでAmazonを凌ぐといわれるECサイト BigBasketのCEO(もしくはその代理の方)が「オーガニックの需要は高まっいて、消費者は"本物の"認証のついたオーガニックを求めている」おっしゃっていたのが印象的でした。
インドではオーガニック商品は一般の商品の15~20%の高さで取引されているそうですが、その事を逆手にとって"本物"ではないものも横行しているとか。だからこそ消費者は本物を求めるのでしょうね。
また、資料を見てみると、オーガニック農業について多少言及されていましたが、ほんとかよっていうレベルのものでした。一部抜粋すると、
政府がオーガニック農家の組合を設立し、オーガニック作物のマーケティングを先導する
とありましたが、現時点でどこまで進んでいるか、有効性があるのかわからないですね。また、
"Savayava Bhagya Yojane" というオーガニック農業のプログラムを実施し、63677haが認証オーガニック耕作地になった。これによって5.4万人の農家がオーガニック農家に
みたいな記述もあったのですが、いかんせん継続性がなければすぐに慣行農業に戻るでしょうし、耕作地の広さだけでいっても生産性が上がらなければ利益はそこまで上げられないと思います。実際のところはどうなんでしょうか。
参考: Savayava Bhagya Yojane | Green Foundation
"貧しい農家"を減らしたいという想い
農業・食品加工セクターの州政府名誉大臣であるSri. Krishna Byregowdaさんが
- 既存農家のインカムを上げることが命題
- 農家とユーザを直接結びつけて中間卸をなくす
とゆっくり力強く語っていた姿が印象的でした。観客もみなこの方の言葉の節々で拍手をしたり声を上げたりしていました。よほど共感したんだと思います。
特にインドでは、所得の少ない農家の貧困による自殺や、農薬被害、中間業者による悪質な中抜などがあるそうです。また、カルナータカでも州の人口の60%が農民ということで、州としても州民としても命題であることは確かなのだろうなと思いました。
参考:
農民の自殺、インドで増加-綿花価格下落で地方の貧困深刻化 - Bloomberg
Amulモデルがインドの農業を変える!? | AGRI IN ASIA
全体の感想
かなり言葉の壁があって、恥ずかしながら資料で知る情報の方が多かったです...。ただ州として支援する姿勢は今後も変わらなさそうですし、ここ5年くらいで確実に発展はしていくだろうなと感じました。オーガニック農業に関しては州として優先度は低そうですが、農家の教育を促してはいますし、支援制度を使うこともできると思うので、何かしら食品関連や農業関連でビジネスをしたい場合は期待はできそうだなと感じました。