「逆説のスタートアップ思考」が良かった
- 作者: 馬田隆明
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/03/08
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る
元々、著者である馬田(Umada)さんのスライド(以下)を見ていて、すごいよかったので、重複する部分はあるだろうと知りながらも、値段も700円くらいとお手頃だったので買ってみました。結果すごいよかったです。
www.slideshare.net
※ 他のスライドも東大で実際に利用されている(?)もので、とても勉強になります
逆説っていうと一見間違いだと思われるようだが、実際は真であるようなこと。なので、「スタートアップにおける間違っているようで実は真である」ような事柄を様々な面からやさしく解説した本になります。
例えば、スタートアップは
「他人から見れば不合理なアイディア」や「他人からは悪く見えるようなアイディア」、あるいは「まだ世間的なコンセンサスが取れていないアイディア」を選ぶ必要があります。
と言っています。普通は逆で、他人からみて分かりやすいアイディアがいいアイディアなんじゃないかって思われがちですが、実はそうではないと。なぜならば、
- 合理的に考えられたものは既に頭のいい人に食い尽くされている
- 大企業が気づいても合理的でないので却下される可能性が高い
- 投資家は投機性の高い投資と保守性の高い投資の両極端に偏る傾向がある
というような理由があるからだと、airbnbやgoogleなどの実例や著名な投資家や哲学者の言葉を引用しながら解説してくれます。なるほどな、と思わせられるものが多いです。ただ同時に「悪いアイディアに見えて実際に悪いアイディア」の方が圧倒的に多いから注意しろよな、とも言ってくれていてとても親切です。
社会人にこそ読んでほしい
本書は主にスタートアップップに興味をある人を想定しているとのことですが、私個人的には、これからの日本は効率化が更にすすみ、今まで通りの定型的なことをしていても食えなくなる、もしくは相対的に価値が下がると思っているので、同じような危機感をお持ちの方にとって、生存戦略の一助としてスタートアップ的思考法をこの本でパパっと俯瞰するのに良いのではと思いました。
最後のキャリア論なんかも、大企業の大規模リストラが他人事ではない時代で、どういうマインドセット(月並みにいうと"起業家的な"マインドセット)をもって生き抜いていけば良いのか、みたいなことを書いていたりします。また中小企業において、「なかなか新しいことをさせてくれない」とか、「この職種は自分にマッチしていない」と悶々としている方も、本書ではまずサイドプロジェクトや副業として新しいこと進めればいいよと言っていたり、局所最適解に陥っている可能性もあるから色々試そうぜとか言ってたり、ポジティブな考え方をさらっと伝えてくれるので、気持ちが楽になるのではと思います。
まとめ
私は、しがないアプリエンジニアから、フリーランスを経て、全く畑の違う農業界にガチの現場から飛び込んで、今ベトナムで自身の考える価値を社会にぶつけようと頑張っているところです。特に直近1年はリスクを取りすぎて余裕がなく、考え方が狭くなっていたなと反省しているのですが、個人的にはこの本の内容が「方向性はまぁこれでいいとおもうけど、ただこういうところに気をつけてな、こういうところは大事やで」みたいな感じで、優しく励まされるような感じで脳内変換されて、とても元気づけられました。
家入さんの「なめらかなお金がめぐる社会。あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。」という本で、
自分を肯定してくれる場所さえあれば、人はチャレンジすることに対する恐れが減る
とありました。ちょっと大げさかもしれませんが、周りにメンターがいなかったり仲間が少ない中、水面下でもがいている人たちにとっては、肯定しつつ助言を与えるという意味で、この本はその場所に代替するような本だなと思いました。