mitolab's diary

東南アジアで頑張って生きてる人のブログ

このご時世にあえて東南アジアで人力の電話通訳サービスをはじめようと思った理由

今、こんなアプリを開発しています。

jelly-talk.com

海外で困った時に、プロの通訳者に通訳を依頼できるアプリです。

はじめようと思った直接的なきっかけ

僕ら自身がペルソナ

注)僕ら

去年約1年間ベトナムの片田舎で某農業プロジェクトをしていた際に、お金が無くフルタイムの通訳さんを雇えず、通訳さんによく電話で通訳を依頼していたことが元々のきっかけです。

ベトナムは、首都のハノイや中部の観光地ダナン・ホイアン外資進出の進む南部のホーチミンなど、外国人の多いところでは英語が通じるホテルやお店が多く、外国人でも英語が話せれば特に不自由無く暮らすことができます。IT系などの英語でコミュニケーションがとれるビジネスなら英語で完結できる可能性も大きいです。

が、ひとたびローカルに足を踏み入れると本当に英語が通じなくなります。僕らが住む街もハノイから60km離れた片田舎で、これといって特別な観光地があるわけではないので、外国人自体が少なく、英語や日本語を喋るローカルの人は珍しいです。

英語メニューのあるレストランであっても、店員が英語が喋れるわけではなかったりするので、最低限のベトナム語を知っていないと注文ができないこともままあります。

飯くらいならまだ失敗してもいい思い出ですが、例えばそこに住むと想定した場合、電気・水道・ガス・ネットなどのインフラ面はかなり難易度が高いですし、住まずともちょっとしたビジネスやトラブルの場合も、ジェスチャーじゃ全然足りない情報量なので、英語が通じないのは致命的です。

(余談) 具体的なターゲットとして、アウトバウンドだと、僕らみたいなフリーランスとかノマドの人、ローカルな旅行をしたい旅行者がターゲットです(駐在員の方は待遇が比較的良いので、常駐の通訳さんや英語圏内で生活できるので困らないことが多い)。インバウンドだと、日本に買い物にいくベトナム人がターゲットです。最近はこんなデータもあります。が、傲慢にも自分らがターゲットだーとか思ってユーザヒアリングを後回しにしてしまい、今テストユーザーさんが集まらずちょっと後悔しています..。

子育て中でも働きたい通訳さん

1年もベトナムにいると、色々な課題が目に留まるので、今の通訳サービスではなく、これいんじゃないかっていうアイディアを思いついき、とある通訳さんのご自宅を訪問してそのサービスの課題インタビューをしました。

そこでたまたまこんな言葉を耳にしました。

「今は産休で外に働きには出れないから、家でできる翻訳の仕事をしている。でも旦那の稼ぎだけでは辛いのでできれば私ももっと稼ぎたい」

と。

この言葉は妙に覚えていて、後に、僕らがそもそも持っていた困っときは通訳さんに電話通訳を依頼したいというニーズとマッチするのでは?と気付き、改めて別の通訳さんに、「リモート通訳アプリってどう?」と話をしてみたところ、すこぶる感触が良かった。

ということで、まずはwebサイトを作って、通訳さんを募ったところ、一時募集をストップせざるを得ないほどの応募がありました。応募してくれた通訳さんには片っ端から面談で日本語レベルをチェックさせてもらい、軽くヒアリングでどうして使いたいかなどを聞いていきました。

結果、産休という理由だけではなく、日本で看護の仕事をしている方が、日本の仕事はきつすぎるのでベトナムに戻って日本語を活かして通訳として働きたいとか、純粋に困っている人を助けたいとか、パラリーガルをしているが通訳としても仕事をしたいとか、いろいろな専門性を持った人が色々な理由で通訳の職を求めているということがわかりました。

なんにしても共通してるのは、皆すごい勤労意欲を持っているってことです。

このご時世への反論

自動翻訳アプリでええやん説

よく反論として、「自動翻訳アプリがあるやないか」と言われるのですが、それが"全然"ではないですが思ったほど役にたたなかった..。

当初は、お金がなかったのでそれこそグーグル翻訳などでなんとか頑張っていましたが、通じる時もあれば全く通じないときもある。傾向としては1センテンスくらいの単純なことはなんとか翻訳してもらえますが、それ以上のことになるとキョトンとされることが多かったです。その度に、最終的には通訳さんに電話をして伝えてもらう、ということをしてたので、結局は私達の中ではグーグル翻訳には頼らず、いきなり通訳さんにかける、という解決策に落ち着きました。

ある一定レベル以上の通訳さんであれば、電話ごしに内容を伝えて通訳してもらうとほぼ100%相手に伝わるし、会話のやり取りもスムーズだしでかなりUXが良いです。心理的に相手もこちらも安心してしゃべれるというのも大きいです。

ついでにいうと、自動翻訳アプリだと、ローカルの方(特に年配の方)は「これは何?」っていう顔をされて、うまく使い方を理解してくれないこともありました。でも電話の場合は、スマホの画面をみせると、「あ、電話ね」って理解してしゃべってくれました。

今後AIがより発展するんだから通訳者いらんやん説

端的にいうと、現段階ではリアルな通訳者は必要だと思いますが、部分的/段階的に置き換わっていくのは時間の問題だと思います。でも、じゃあそれによってあぶれる人たちはいったいどうすればいいの問題が浮上しませんか?と思うのです。

個人的にはAIというか非効率的な仕事が効率化されていくみたいなイメージです。それらによって、少しづつ採用人数が減っていき、単純な仕事しか出来ない人から仕事が無くなっていくのではないかと..。著名人の言葉を借りると、

こういう世界が今後より現実的になってくるのではと思っています。

これは特段日本に限った話ではなくて、ベトナム出生率が下がり続けていて、生産年齢人口も徐々に少なくなるみこみです*1ので、ゆくゆくは日本と似たような状況になっていく可能性が高いのでは?と懸念しています。寧ろ、日本や先進国*2で開発された技術が、国の規制がゆるい東南アジア各国で導入されると、変化が激しい可能性が高いと思っています。そうなると、いきなり職にあぶれるとかいう人も多数でるかもしれません。

ということで、そういう変化を少しでも段階的にしつつ、機械より優れていて、人がやっていてほしい、または人がやっていて楽しいと思えるお仕事を提供して、機械とは共存していければいいのではと思っています。そういう風にアプリも育てていきたいなと思っています。

日本は今若い人ただでさえ少ないんだから海外に逃げるな説

確かに、日本は世界で最も早いスピードで高齢化が進み、失われた世代の若者に対する負荷と責任が大きくなってきています。そこが逆にビジネスチャンスだったりもしますが、だからといって海外にでない理由にはならないのではと思っています。逆に、国境間で起きている問題は海外にでて実際に体感することで危機感をもって取り組めたりもすると思います。

例えば、一時期ガイアの夜明けで取り上げられた外国人研修生制度問題。これは現代の奴隷制度ともいわれていて、僕らも農業の現場で目の当たりにしているので、本当に改善したいと思えました。

この制度は(政府がどう言っているかはともかく)、ざっくりいうと、日本に出稼ぎに行きたい途上国の人と、とにかく安い労働力を求める日本企業をマッチングするサービスで、ぱっとみwin-winの様に見えますが、中間業者のマージン異常に高すぎ問題や、給料未払い/異常に安いとか、差別とか、失踪問題とか、ときには犯罪を犯したりして企業側も困るとかで問題頻発です。

ちょっと過激な言い方をすると、日本国内の労働人口が少なくなっているのに今までの暮らしを維持しようとして、その分のしわ寄せを、とにかく労働単価を安くおさえないと商売が成り立たない1,2次産業レイヤー企業と、海外の安い労働力に担ってもらっているとも言えるのではと思います。

では、改善の方向性としてはどうしたらいいのかということですが、

jp.reuters.com

日本には、生産性上昇率の改善と、より多くの外国人労働者という組み合わせが必要

というような、組み合わせになると思っています。落合先生的にいうと、

こういうことだと思います。

そんな中、落合先生みたいに取り立ててハイパーなスキルを持たない僕らにできることとしたら、リモート通訳アプリを通じて、ベトナム国内で少しでもスキルを持った人が日本に行かずとも、自国で充分食っていけるようにすることであったり、日本に出稼ぎにいっていても、その仕事だけではなく空いた時間で少しでも稼いでもらえるようにすることや、今後増えるであろう国内に住む外国人との窓口になったりして、少しでも不幸な状況を改善できればいいのではと妄想したりしています。

さいごに

以上がざっくりとした理由になります。もし共感してくれる方がいたのであれば、シェアとか実際にテストユーザーになって使ってみるとかしてほしいです!まだまだ挙動は安定しないかもですが..><。テスト期間中は無料でお使いいただけます(通訳さんには報酬をお支払します)ので、よろしければ是非〜。

blog.jelly-talk.com

*1:ベトナムの人口減に関してはこの記事が面白かったです

*2:例えばアマゾン国やグーグル国